事業承継に備えた生命保険の活用を考える

税理士は、時としてお客様のために生命保険の提案を行います。

私もお客様の資金繰りと今後起こりうるリスと相談しながら、保険会社と連携してご提案させていただくこともございます。

その保険をお客様が検討する際の目的については、ここ数年変わってきているように感じます。

これまでは、法人、個人の「節税目的」や「損得感情」で、活用されてきたケースがほとんどだといえます。

そもそも提案する側がそういったことを前面に出して行っていたとも言えます。

最近では、そういった商品も国税庁から、節税を封じる通達を出したり、販売を禁止する動きとなっており、「節税」ありきでは、保険加入を敬遠する動きになっています。

それでは、もはや保険の活用は意味がなくなったのかというと全くそうではありません。

むしろようやく保険本来の目的を理解し、活用すべき時代になったといえます。

そこで、今後の会社を半永久的に継続していくためのステップとして、生命保険がどのようにその企業経営に安心と貢献をもたらしてくれるのか、まとめてみました。

事業承継への活用

事業承継と聞くと、漠然とした不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、適切な準備を早期に進めることで、会社とご家族の未来を守ることができます。

その準備において、生命保険は非常に強力なツールとなり得るのです。

事業承継の本質とは?

まず、事業承継とは何かを改めて確認しましょう。これは単に社長の座を次の世代に譲るだけではありません。その本質は、以下の2点に集約されます。

  1. 個人所有の会社に関する「財産」を次世代に承継させること
  2. 会社「経営」者の立場を承継させ、次世代に会社を運営させること

この両面をスムーズに行うためには、周到な準備が不可欠です。

事業承継は「いつ」行うのがいいのか?

事業承継の準備は、「早ければ早いほどよい」とされています。その理由は以下の通りです。

  1. 経営者としての経験値を積ませる期間: 後継者が経営者としてのスキルと経験を積むには時間がかかります。
  2. 伴走期間の確保: 先代経営者が後継者と共に経営を行う「伴走期間」を設けることで、スムーズな引き継ぎが可能です。
  3. 専門家育成期間の考慮: 事業承継には弁護士や税理士などの専門家のサポートも不可欠であり、彼らが状況を理解し、準備を進める時間も必要です。

早期に準備を始めることで、会社の成長ステージに合わせて適切な承継対策を講じることができます。

なぜ生命保険が事業承継に役立つのか?

事業承継を考える上で、「社長に不測の事態が生じるリスク」は常に念頭に置く必要があります。

経営者が死亡した場合、会社にはさまざまな資金の必要性が発生します。

生命保険は、まさにこのような「もしも」の事態に備え、会社が必要とする資金を準備できる金融商品です。

生命保険が本来持つ「相互扶助」「死亡や病気、ケガへの備え」「将来のための資金の備え」という意義は、法人の場合でも同様です。

少額の保険料で多額の保障を準備できるため、効率的な資金確保手段となります。

生命保険の具体的な活用シーン

では、具体的にどのような必要性が生じたとき、生命保険が活用できるのでしょうか。

1. 借入金返済資金・運転資金の確保

社長に万が一の事態が起こった際、会社が最も懸念するのは資金繰りです。

特に創業期の企業は、経営が安定していない場合が多く、リスクの高い時期とされています。

この時期に「資金繰り」に悩みを抱える経営者は多く、経営者に万が一のことがあれば、金融機関からの融資に対する返済を求められるリスクがあります。

生命保険を活用することで、社長に不測の事態が生じた際のリスクをカバーし、借入金の返済資金運転資金を確保することができます。

2. 自社株対策資金・相続対策資金

事業承継における大きな課題の一つが、自社株の評価と相続に関する問題です。

少数株主対策としての株式集約: 例えば、会社を後継者に集約していく過程で、他の株主から株式を買い取る必要が生じることがあります。

相続時の自社株対策(金庫株): 経営者が亡くなった場合、相続人にとって自社株の相続は大きな負担となることがあります。

生命保険を活用して会社に資金を準備し、会社が相続人から自社株を買い取る「金庫株」を実行することで、以下の目的を達成できます。

相続税の納税資金: 相続人が多額の相続税を負担する場合、自社株を会社に売却することで納税資金を確保できます。

遺産分割の調整資金: 相続人間に遺産の公平な分割を図るための調整資金としても活用できます。

株式の分散防止と経営権の安定: 会社が自社株を買い取ることで、株式が分散し経営権が不安定になることを防ぎます。

この金庫株を実行する際には、「みなし配当課税の特例」が非常に重要です。

これは、相続により取得した株式を相続開始から3年10ヶ月以内に会社に譲渡した場合、通常であれば配当所得とみなされ最大55%の所得税が課される部分が、全額「株式の譲渡所得」として課税され、税率20.315%に抑えられるというものです。

生命保険によって潤沢な資金を準備しておくことで、この特例を有効活用し、税負担を抑えつつ円滑な自社株の整理が可能になります。

3. 役員退職金準備資金

事業承継は、現経営者が「勇退」という形で引退する場合にも発生します。

その際、役員退職慰労金の準備は非常に重要です。

生命保険を役員退職金の準備に活用することで、以下のようなメリットがあります。

生前の勇退退職の準備資金: 計画的な引退に備え、退職金を準備します。

社長に不測の事態が生じた場合の死亡退職金の準備資金: 万が一の場合の死亡退職金としても活用できます。

ただし、優先順位はあくまでも会社の経営を継続するための運転資金が先です。

その運転資金を確保した上で、退職金を払える範囲で払うことになります。

よくいくらなら退職金もらって大丈夫ですかと聞かれることが多いですが、運転資金が残る範囲で、あとはどのくらい欲しいですか、使途はなんですかをお聞きした上で試算するという順序になります。

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まとめ

生命保険は、単なる「節税」や「もしも」の保障だけでなく、事業承継を円滑に進めるための資金準備ツールになることがわかりました。

社長の不測の事態に備える事業保障資金、自社株対策や相続対策の資金、そして現経営者の勇退退職金準備など、その活用範囲は非常に広いです。

会社の状況や成長ステージ、後継者の有無によって最適な承継対策は異なります。

適切な生命保険の活用は、会社の永続的な発展と、ご家族の安心を両立させるための重要な手法なり得ます。

事業承継にご不安をお持ちでしたら、ぜひ一度ご相談ください。

税務面を含め、最適なプランを共に検討させていただきます。

それでは、また。

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